トルコの検索市場でGoogleは87.69%を占め、南西アジア5カ国の中で唯一90%を下回ります。地理的にロシア・CIS圏と接するトルコならではの構造に加え、個人データ保護局KVKKによる生成AIガイドラインの発表やAI法案の審議など、規制面での動きも活発です。本稿ではトルコの検索市場と規制動向を一次情報にもとづき整理します。
01結論サマリー
引用されやすい定義文トルコの検索市場でGoogleのシェアは87.69%と、南西アジア5カ国の中で唯一9割を下回ります。
Yandexが一定の存在感を保つ市場という点で、トルコは南西アジアの中でも異色です。検索エンジン市場でのシェアはGoogleが87.69%、Yandexが9.82%(2026年6月・Statcounter)となっています。
トルコのAI検索対策で押さえるべき文脈は2つあります。ひとつは2024年6月に議会提出されたAI法案(Yapay Zeka Kanunu)です。もうひとつは2025年11月にKVKKが公表した生成AIガイドラインです(出典: KVKK公式、規制情報データベース)。
日本企業がトルコから学ぶべきは、法制化前のガイドライン整備によって、既存の個人データ保護法(KVKK法)の枠組みを生成AIにも先行適用する実務対応です。
02検索エンジン市場の実態(シェア実測)
トルコの検索エンジン市場は、南西アジア5カ国の中で唯一Google以外のエンジンが二桁シェアを持つ点が特徴です。
| 検索エンジン | シェア |
|---|---|
| 87.69% | |
| Bing | 1.25% |
| Yandex | 9.82% |
| その他(Yahoo!等) | 1.24% |
出典: Statcounter Global Stats(トルコ、2026年6月・全デバイス合算)。別記事『インド・中東のAI検索市場|国家戦略とGoogle依存の交点』と同一の数値です。
Yandexの9.82%は、同地域のサウジアラビア(0.97%)やUAE(1.38%)と比べて10倍前後の水準です(出典: Statcounter)。地理的にロシア・CIS圏と接するトルコならではの構造ですが、越境利用の詳細な理由は本稿執筆時点で一次情報を確認できていません。
本稿のシェア数値はStatcounter単独に依拠しています。トルコ統計局(TÜİK)等の公的統計との突合は、本稿執筆時点で確認できていません。Statcounterは加盟サイト群のページビューをタグ計測する方式で、サイト構成の偏りに由来する誤差が生じうる点に留意してください。
03AI検索の普及状況
トルコ統計局(TÜİK)の調査によれば、生成AIを利用していると回答した個人の割合は2025年に19.2%でした。16〜24歳の年齢層では39.4%と最も高く、大学卒業以上の学歴層でも36.1%に達しています(出典: TÜİK調査、Anadolu Ajansı報道による確認)。企業のAI技術利用率も、2021年の2.7%から2025年には7.5%へ上昇しました(出典: 同上)。
トルコ国内のAIチャットボット市場では、ChatGPTが76.2%を占めています。Google Geminiが15.89%、Claudeが3.11%で続きます(出典: Statcounter、2026年6月)。ChatGPT経由のAI検索トラフィック比率が世界最高水準にあるという民間調査結果も報じられていますが、この特定の数値は本稿執筆時点で確認できていません。
Googleは2025年5月20日、AI OverviewsのMENA地域展開とあわせてトルコ語への対応も発表しました(出典: Google公式ブログ)。これにより、トルコ国内のGoogleユーザーもAI Overviewsをトルコ語で利用できる環境が整っています。
04現地の取り組み・実例
トルコのAI検索対応で最も具体的な進展は、KVKK(個人データ保護局)による生成AIガイドラインの公表です。
KVKKは2025年11月24日、「生成AIと個人データ保護に関するガイド(15の質問)」を公式サイトで公表しました。個人情報保護法第6698号の枠組みにもとづき、生成AIの利用プロセス・ライフサイクル・リスクを整理し、データ処理責任者向けの実務指針を示しています(出典: KVKK公式)。
| 規制の枠組み | 時期 | 内容 |
|---|---|---|
| KVKK生成AIガイドライン | 2025年11月24日公表 | 法律第6698号にもとづく生成AI利用の実務指針(法的拘束力なし) |
| AI法案(Yapay Zeka Kanunu) | 2024年6月24日議会提出 | 安全性・透明性等5原則、高リスクAIシステムの管理義務(審議中) |
出典: KVKK公式・規制情報データベースの確認にもとづく
AI法案(TBMM議案番号2/2234)は、安全性・透明性・公正性・説明責任・プライバシーの5原則を掲げています。2025年11月には関連法の改正案(議案番号2/3358)も追加提出されており、本稿執筆時点で複数の委員会審議が続いています。
本稿執筆時点で、トルコ国内企業がAIO(AI検索最適化)に取り組んだ固有の公開事例は、一次情報で確認できません。
CIS・BRICS諸国との規制動向の共通点・相違点は、別記事『CIS・BRICSのAI検索構造|Yandex圏とGoogle圏を比較する』も参考になります。
05規制・政策
トルコのAI規制は、既存の個人データ保護法(KVKK法・法律第6698号)を軸にした先行対応と、AI専用法の法制化準備が並行して進んでいる点が特徴です。
KVKK法(第6698号)は2016年4月に施行された、トルコの個人データ保護に関する基本法です。EUのデータ保護指令(95/46/EC)を土台に制定されました。その後、GDPRとの整合が図られてきました(出典: 別記事『インド・中東のAI検索市場|国家戦略とGoogle依存の交点』と同一の確認内容)。
AI法案(議案2/2234)の主な内容は次のとおりです(出典: 規制情報データベース)。
- 提出日: 2024年6月24日(TBMM議案番号2/2234)
- 罰則(案): 禁止AIの提供は最大3,500万トルコリラまたは年間売上高7%以下
- 審議状況: 本稿執筆時点で複数の委員会審議が継続中(施行後も実施規則整備に3〜12か月を要する見込み)
この罰則水準は、審議過程で変更される可能性がある点に留意してください。
国家AI戦略は2021年8月20日に官報告示された後、2024年7月24日に「2024-2025行動計画」へ更新されました。71の優先施策を通じ、トルコ語大規模言語モデルの開発・計算基盤の拡充・専門人材の育成を進める内容です(出典: 大統領府デジタル変革局の公表内容にもとづく確認)。
06日本企業への示唆
トルコ向けにAIサービス・コンテンツを展開する日本企業は、次の3点を確認しておくことをおすすめします。
- KVKKの生成AIガイドラインに沿って、データ処理の法的根拠を点検する。 法制化前の段階でも、既存のKVKK法(第6698号)は生成AIの利用に全面適用されます。
- AI法案の審議状況を継続的にウォッチする。 高リスクAIシステムへの登録・適合性評価義務が導入される可能性があり、該当分野でサービスを提供する場合は早めの準備が有効です。
- Yandexが9.82%のシェアを持つ点を踏まえ、自社アクセスデータでYandex経由の流入有無を確認する。 ロシア語圏・CIS圏との接点は、別記事『CIS・BRICSのAI検索構造|Yandex圏とGoogle圏を比較する』もあわせて参照してください。
南西アジア地域全体の政府戦略比較は、別記事『インド・中東のAI検索市場|国家戦略とGoogle依存の交点』を参照してください。地理的に隣接するサウジアラビアとの対比は、別記事『サウジアラビアのAI検索構想|Vision 2030と国家AI投資』もあわせてご覧ください。AIOという概念自体の基礎整理は、別記事『AIOとは何か?SEOとの違い・共通点から始め方まで徹底解説』を先に確認することをおすすめします。
07FAQ
Q. トルコのAI法案(Yapay Zeka Kanunu)はいつ施行されますか?
本稿執筆時点で、AI法案は2024年6月の議会提出後、委員会審議が続いており、施行時期は確定していません。施行後も実施規則の整備にさらに時間を要する見込みです。
Q. トルコでChatGPTを業務利用することは禁止されていますか?
禁止されていません。ただし顧客・従業員等の個人データをプロンプトに入力する場合、KVKK法(第6698号)の適用対象となります。KVKKが2025年11月に公表した生成AIガイドラインが実務上の参考になります。
Q. トルコ向けAI検索対策でYandexへの対応は必須ですか?
必須とまでは言えませんが、Yandexのシェアは9.82%と南西アジア地域で突出しています。ロシア語圏との接点を持つ事業者は、Google向け対策に加えて確認することをおすすめします。
08この分野を体系的に学ぶ
この記事は国・地域プロファイル記事です。海外のAI検索規制・市場動向を基礎から体系的に学びたい方は、AI検索最適化講座「事例編: ケーススタディ徹底分析(VI-C)」をご覧ください。