中国は、Googleが実質的に機能しない独自の検索エコシステムを持つ市場です。百度(Baidu)が長年市場を主導し、近年は自社AIモデル「ERNIE(文心一言)」を検索に統合する動きを強めています。
本記事は、Statcounterの実測データと百度の決算発表、中国政府の公式法令にもとづき、中国のAI検索対策で押さえるべき市場構造と規制環境を整理します。
01結論サマリー
引用されやすい定義文中国は、百度が検索市場の半分近くを占める、独自の検索エコシステムを持つ市場です。
2026年6月時点で百度が47.44%、Bingが23.24%、Haosou(360捜索)が14.02%です(出典: Statcounter)。ただしStatcounterの中国データはBing過大表示が指摘されており、実態は百度優位と見るのが妥当です(詳細は後述)。
百度は2026年第1四半期決算で、AI関連中核事業の売上高が136億元に達したと発表しました。これは百度の一般事業売上の52%に相当し、初めて半分を超えた水準です(出典: 百度公式、2026年5月18日)。一方、中国企業のAIO対応の公開事例は、本稿執筆時点で一次情報で確認できていません。
中国は2023年8月15日から「生成式人工智能服务管理暂行办法」を施行しています(出典: 中国国家インターネット情報弁公室)。生成AIサービス提供者には、安全評価やラベル表示など具体的な義務が課されています。日本企業が中国向けにコンテンツを展開する際は、市場構造と規制の両方を理解する必要があります。
02検索エンジン市場の実態(シェア実測)
Statcounterの実測データによると、中国の検索エンジン市場は次のような構成になっています(2026年6月・全プラットフォーム合算)。
| 検索エンジン | シェア |
|---|---|
| Baidu | 47.44% |
| Bing | 23.24% |
| Haosou | 14.02% |
| Yandex | 10.23% |
| Sogou | 2.62% |
| 2.28% |
中国はGoogleがほぼ機能しない、世界でも特異な市場です。表面上はBaiduが単独で半分近くのシェアを持ち、BingとHaosouも高い数値を示しますが、この内訳の解釈には注意が必要です。
Statcounter調べではBingが23.24%と高いシェアを示しますが、Bingは中国本土では一般ユーザーが通常アクセスできない検閲対象です。Statcounterの中国データには「Bing過大表示」という既知のデータ品質問題が指摘されています。実際に2023年にはBingがBaiduを逆転するという明白な誤測定が記録され、後日訂正されています。したがって実態はBaidu優位と見るのが妥当です。
03AI検索の普及状況
百度は自社LLM「ERNIE」を検索体験に統合する方針を明確にしています。2026年第1四半期、AI関連の中核事業の売上高は前年同期比49%増の136億元に達しました(出典: 百度公式決算発表、2026年5月18日)。これは一般事業売上の52%を初めて超えた水準です。
これは、百度がAI機能を新サービスとして切り出すのではなく、既存の検索体験そのものに統合する戦略を取っていることを示す数値です。ChatGPTやGeminiなど海外の主要AIサービスは、政府のインターネット管理により中国本土から通常アクセスできません(遮断対象)。これらサービスの中国国内での利用実態については、本稿執筆時点で信頼できる一次データを確認できていません。
04現地の取り組み・実例
※本稿執筆時点で、中国企業によるAIO対応の公開事例(AI検索での引用増加を数値で示した事例等)は一次情報で確認できません。この点は正直にお伝えします。
代わりに確認できるのは、百度自身のAI統合の進捗と、規制当局が求める義務の内容です。百度はERNIEモデルを検索・アルゴリズム推薦・広告などの既存事業に統合しています。中国政府は「生成式人工智能服务管理暂行办法」を通じて、コンテンツのラベル表示や安全評価などの義務を生成AIサービス提供者に課しています(出典: 中国国家インターネット情報弁公室)。
05規制・政策
そもそも中国国内でウェブサイトを運営するには、ICP備案(网站备案)という工業和信息化部への登録が必要です(出典: 工業和信息化部)。原則として中国国内法人(現地子会社等)が備案の主体として求められ、境内に拠点のない外国企業単独では登録できません(出典: 阿里雲ヘルプセンター)。中国向けAIOは、この参入要件の確認が出発点になります。
中国は2023年7月10日、国家インターネット情報弁公室など7部門連名で「生成式人工智能服务管理暂行办法」を公布しました(出典: 中国国家インターネット情報弁公室公式サイト)。同法は同年8月15日に施行されています。
同法は、生成AIサービス提供者に対して次のような義務を定めています。
- 世論誘導性・社会動員力を持つサービスは安全評価とアルゴリズム届出を行う(第17条)
- 画像・動画等の生成コンテンツにラベル表示を行う(第12条)
- 国家転覆の扇動や虚偽有害情報の生成を防止する(第4条)
- 利用者との間でサービス協議を締結し権利義務を明確化する(第9条)
- 違法コンテンツを検知した場合は生成停止・伝送停止・削除等の措置を取る(第14条)
これらの義務は、生成AIを使ってコンテンツを配信する事業者全般に影響します。中国向けにAI生成コンテンツを展開する場合、ラベル表示義務は特に確認すべき条項です。
06日本企業への示唆
中国市場でのAIO対応にあたり、日本企業が押さえるべき実務ポイントは次の4点です。
- 中国向けサイト運営の前提としてICP備案の要否を確認する。境内サーバーでの運営やコンテンツ配信を計画する場合は、現地法人の要否を含めて早期に確認してください。
- Baidu独自のアルゴリズムを前提に対策する。Googleが機能しない以上、Baidu向けの構造化データ・コンテンツ設計が起点になります。海外の主要AI検索エンジンとの特性の違いは、別記事『AI検索エンジンの種類と使い分けまとめ|主要7サービス比較表』も参考になります。
- 海外AIクローラーの到達性を事前に確認する。中国国内からのアクセス環境は他国と異なるため、主要クローラーが自社サイトに到達しているかを個別に確認する必要があります。クローラーの仕様は、別記事『GPTBot・OAI-SearchBot・ChatGPT-User比較』および『AIクローラー別robots.txt設計テンプレ集【2026年版】』を参照してください。
- 生成AI規制のラベル表示義務を確認する。中国向けにAI生成コンテンツを配信する場合、生成式人工智能服务管理暂行办法の対象範囲を事前確認します。
Baidu向けの実務対策をさらに深掘りした内容は、別記事『Baidu公式ガイドで設計する中国語圏AIO|品質基準とERNIE対応』で解説しています。
AIOという概念自体の基礎整理は、別記事『AIOとは何か?SEOとの違い・共通点から始め方まで徹底解説』を先に確認することをおすすめします。
07FAQ
Q. 中国でSEO対策をする場合、Baiduだけを意識すれば十分ですか?
Baiduが中国検索市場の中心です。Statcounterの中国数値には測定上の偏りがあるため、実務ではBaidu(文心一言・AI検索統合)を第一優先とし、他エンジンは補助的な位置づけで検討してください。
Q. 中国版のAI Overviewsのような機能はありますか?
百度は自社LLM「ERNIE」を検索体験に統合しており、2026年第1四半期にはAI関連中核事業の売上が一般事業売上の52%を超えたと発表しています(出典: 百度公式)。
Q. 生成AI規制は日本企業にも適用されますか?
中国国内で生成AIサービスを提供する事業者が対象です。適用範囲は事業形態によって異なるため、中国向け事業を計画する際は専門家への確認をおすすめします。
08この分野を体系的に学ぶ
この記事は国・地域プロファイル記事です。海外AIO動向を基礎から体系的に学びたい方は、AI検索最適化講座「事例編: ケーススタディ徹底分析(VI-C)」をご覧ください。