引用されやすい定義文カナダは検索エンジン市場でGoogleが85%超を占める一方、AI検索対応の実態は企業側から先行しています。
国内最大手のShopifyはエージェントコマースの世界的なハブとなりつつあり、包括的なAI法案は2025年に廃案となりました。本稿ではカナダの検索市場の実態と、企業・政府双方のAI検索対応を一次情報にもとづき整理します。
01結論サマリー
検索市場はGoogleの一強構造が続く一方、AI検索実装ではShopifyの事例に代表される先行的な動きが企業側から生まれている市場です。 カナダの検索エンジン市場でGoogleは85.72%を占めています(2026年6月・Statcounter)。
カナダのAI検索対応で最も特徴的な動きは、政府ではなく企業側から生まれています。オタワに本社を置くShopifyは2026年第1四半期、AI検索経由のストア流入が前年比8倍、AI経由の注文が同13倍に増加したと発表しました。一方、政府主導の包括的なAI法制化は停滞が続いています。
AI・データ法案(AIDA)を含むBill C-27は、2025年1月の議会閉会(プロローグ)により廃案となりました。後継の国家AI戦略「AI for All」も、新規のAI専用法には踏み込んでいません。日本企業がカナダから学ぶべきは、法規制の空白期を待つのではなく、企業単位でAI検索チャネルへの実務対応を先行させる姿勢です。
02検索エンジン市場の実態(シェア実測)
カナダの検索エンジン市場もGoogleが圧倒的優位ですが、Bingのシェアは9%台と一定の存在感を保っています。
| 検索エンジン | シェア |
|---|---|
| 85.72% | |
| Bing | 9.79% |
| Yahoo! | 2.34% |
| DuckDuckGo | 1.52% |
| Yandex | 0.30% |
| Ecosia | 0.19% |
出典: Statcounter Global Stats(全デバイス合算・2026年6月)
本稿のシェア数値はStatcounter単独に依拠しています。CRTCや政府統計機関による独自データとの突合は、本稿執筆時点で確認できていません。Statcounterは加盟サイト群のページビューをタグ計測する方式で、サイト構成の偏りに由来する誤差が生じうる点に留意してください。
03AI検索の普及状況
世界全体でAIチャットボットを週次でニュース目的に利用する人の割合は10%です(前年7%から増加)。出典はReuters Institute Digital News Report 2026です。カナダ単体の利用率は、本稿執筆時点で確認できていません。
カナダのニュース全般への信頼度は37%で、世界平均と同水準です(前年比2ポイント低下、出典: Reuters Institute)。言語圏別では英語圏35%、フランス語圏44%とばらつきがあります。同レポートでは、AIシステムがカナダのジャーナリズムを広く学習・再生成しているとの研究報告も紹介されています。
04現地の取り組み・実例
カナダのAI検索対応で最も具体的な進展は、政府機関ではなく企業から生まれています。オタワに本社を置くECプラットフォームのShopifyが、その代表例です。
OpenAIは2025年9月、ChatGPT上で決済まで完結する「エージェンティックコマース」機能を立ち上げました。その最初のパートナーに選ばれたのがShopifyです(出典: Shopify公式)。Shopifyは2026年1月、「Agentic Storefronts」を発表しました。ChatGPT・Google AI Mode・Microsoft Copilot・Geminiなど複数のAIチャネルを、管理画面から一元管理できる機能です。
同社の2026年第1四半期決算説明会(5月5日)では、AI検索経由のストア流入が前年比8倍に増加したと説明されました。AI検索経由の注文は同13倍に増加しました。新規購入者の注文は、他チャネルの約2倍のペースで発生しているといいます(出典: Shopify 2026年Q1決算説明会・Harley Finkelstein社長発言)。
この急拡大の内訳は、別記事『ECのAIO事例|エージェントコマース最前線と再現のポイント』で詳しく解説しています。同記事では2025年1〜11月期の従来データ(流入7倍・注文11倍)との比較も扱っています。なお、Shopifyが公表するこれらの数値はグローバル全体の集計値であり、カナダ市場単体の内訳は本稿執筆時点で確認できていません。
05規制・政策
カナダには、AI検索そのものを直接規律する専用法が本稿執筆時点で存在しません。AIDAの廃案後、政府は新しい国家AI戦略「AI for All」を掲げましたが、内容は消費者プライバシー法制の近代化やオンライン安全法など既存法制の更新が中心です。AIDAに相当する新しいAI専用法への言及はありません(出典: ISED公式)。
一方、オンラインニュース法(Bill C-18)はGoogleとMetaで対応が大きく分かれています。Googleは年間1億カナダドル(インフレ調整後)をカナダ・ジャーナリズム・コレクティブへ拠出する条件で、CRTCから5年間の適用除外を得ました(2024年10月28日決定)。Metaは同法の対象になることを避けるため、2023年以降カナダ国内のFacebook・Instagramでニュースコンテンツの掲載自体を停止しています。政府との交渉再開の動きは、本稿執筆時点で確認できていません。
同法は現時点で検索エンジン・ソーシャルメディアプラットフォームを対象としており、生成AIチャットボットを直接の適用対象とする条文は含まれていません。豪州のNews Bargaining IncentiveがAI企業を対象に含めるかを議論しているのと同様の論点が、カナダでも今後浮上する可能性があります。詳しくは別記事『豪州のAI検索とニュース対価|制度設計の経緯を追う』で解説した豪州の議論と共通する構図です。
検索結果内で情報が完結しクリックが減る現象は「Google Zero」と呼ばれています。詳しくは別記事『「Google Zero」現象とは何か|The Verge報道解説』で扱いました。カナダのオンラインニュース法の背景にも、同様の問題意識があります。隣接する米国の状況は、別記事『米国AI検索の現在地|Google優位と生成AIサービスの広がり』で解説しています。
06日本企業への示唆
カナダ向けにEC・コンテンツを展開する日本企業は、次の3点を確認しておくことをおすすめします。
- ShopifyのAgentic Storefrontsのように、AI検索経由の購買導線が急拡大しています。 カナダ向けEC事業を持つ場合、商品属性・価格・在庫をAIエージェントが読み取りやすい形で構造化し、リアルタイムに反映する体制を優先的に整備してください。
- オンラインニュース法はGoogleとMetaで対応が分かれ、Metaはカナダ国内でニュース掲載自体を停止しています。 カナダ向けにニュース性コンテンツを配信する場合、プラットフォームごとに掲載可否・引用条件が異なる前提で配信計画を確認してください。
- AIDAの廃案後、AI規制は「AI for All」戦略のもとで流動的な状態です。プライバシー法改正・オンライン安全法等、今後の新規立法の動向を継続的にウォッチすることをおすすめします。
07FAQ
Q. カナダにAI・データ法(AIDA)は現在も存在しますか?
いいえ。AIDAを含むBill C-27は、2025年1月の議会閉会(プロローグ)により廃案となりました。本稿執筆時点で、後継の包括的なAI専用法は再提出されていません。
Q. Shopifyのデータは日本のEC事業者にも当てはまりますか?
Shopifyが公表しているのはグローバル全体の集計値で、カナダ・日本市場限定の内訳は本稿執筆時点で確認できていません。ただしAI検索経由の流入・注文の急拡大は、直近2回の開示で一貫した増加傾向が報告されています。
Q. カナダのオンラインニュース法はAI企業にも適用されますか?
現行のオンラインニュース法(Bill C-18)は、検索エンジン・ソーシャルメディアプラットフォームを対象とした制度です。生成AIチャットボットを直接の適用対象とする条文は、本稿執筆時点で確認できていません。
08この分野を体系的に学ぶ
この記事は国・地域プロファイル記事です。海外のAI検索規制・市場動向を基礎から体系的に学びたい方は、AI検索最適化講座「事例編: ケーススタディ徹底分析(VI-C)」をご覧ください。