「AI Overviews表示でCTRが61%減る」という数字を、目にした方も多いのではないでしょうか。この数字は本当に正しいのか、そしてどんな条件で成立するのか。WEBMARKSは複数の一次情報を原典まで遡り、数字の出どころと前提条件を検証しました。

01検証の結論

結論から言うと、「61%」という数字は実在します。ただし出典はAhrefsではなく、米国のマーケティング会社Seer Interactiveです。しかも同社の異なる2つのレポートに、定義の異なる「61%」がそれぞれ登場します。

引用されやすい定義文

「CTR61%減」という数字はSeer Interactiveの調査に由来し、Ahrefsの調査結果ではありません。

Ahrefs調査では34.5〜58%、米国の調査機関Pew Research Centerの調査では約47%の減少が報告されています。「AI Overviews表示でクリックが減る」という方向性は、複数の独立した調査で一致しています。しかし「61%」という数値を唯一の正解として引用するのは不正確です。

02検証設計

  • 対象: 「CTR61%減」の出どころ調査と、比較のための関連調査(Ahrefs・Seer Interactive・Pew Research Center)
  • 期間: 各調査の対象期間は2023年12月〜2026年2月、公表時期は2025年4月〜2026年4月です。本検証の実施は2026年7月です
  • 方法: 「61%」という数字の初出をWebSearchで特定し、各調査機関の公式ページへ直接アクセスしました。対象規模・期間・指標の定義を横並びで比較しています

03結果

検証の結果、「CTR61%減」に該当する報道・調査は主に5件確認できました。対象規模・期間・指標の定義が調査ごとに異なるため、単純な横並び比較はできません。まず全体像を表で整理します。

主要5調査の比較

CTR減少に関する5調査の時系列比較 Ahrefs初版(2025年4月・KW30万件・34.5%減)、Pew Research Center(2025年7月・900人・約47%減)、Seer Interactive v2(2025年9月・42組織3,119クエリ・61%減)、Ahrefs更新版(2026年2月・KW30万件・58%減)、Seer Interactive v3(2026年4月・53ブランド547万クエリ・61%減)を時系列に並べた比較図。対象規模・期間・指標定義が異なるため単純な横並び比較はできない。 TIMELINE CTR減少に関する5調査の時系列比較 34.5%減 Ahrefs(初版) 2025年4月・KW30万件 約47%減 Pew Research Center 2025年7月・米国成人900人 61%減 Seer Interactive(v2) 2025年9月更新・42組織3,119クエリ 58%減 Ahrefs(更新版) 2026年2月・KW30万件 61%減 Seer Interactive(v3) 2026年4月・53ブランド547万クエリ 対象規模・期間・指標の定義が調査ごとに異なり、単純な横並び比較はできない 同じ「61%」でもSeer v2とv3は指標の定義が異なる
Ahrefs・Seer Interactive・Pewによる5調査を時系列で並べた比較図
調査主体公表時期対象規模対象期間指標結果
Ahrefs(初版)2025年4月KW30万件(AIO有無各15万)2024年3月時点順位1位のオーガニックCTR34.5%減
Ahrefs(更新版)2026年2月同上のKW30万件2023年12月→2025年12月順位1位のオーガニックCTR58%減
Seer Interactive(v2)2025年9月更新版42組織・3,119クエリ2024年6月→2025年9月AIO表示クエリの平均オーガニックCTR61%減(1.76%→0.61%)
Seer Interactive(v3)2026年4月53ブランド・547万クエリ2025年Q3→Q4ブランド引用時のオーガニックCTR61%減(Q3→Q4四半期比※)
Pew Research Center2025年7月米国成人900人の実利用データ2025年3月AI要約の表示有無別クリック率8%対15%(約47%減)

表のとおり、「61%」はSeer Interactiveの2つのレポートにそれぞれ独立して登場します。ただし指標の定義は異なります。v2は「AIO表示クエリ全体」の15か月間の推移を指しています。

v3は「ブランドが引用された場合」に限定した四半期比の推移です。月次では9月2.52%→10月1.21%→11月0.76%という推移を同社が公表しており、この期間の下落幅と整合します(※四半期比61%という集計値そのものの原典該当箇所は確認中のため要確認)。同じ会社の同じ「61%」でも、比較している対象が違うのです。

Ahrefsの数字が「61%」と混同されやすい理由は、テーマと規模感が近いためと考えられます。しかしAhrefsの手法は、順位1位のCTRのみが対象です。Seer Interactiveは、複数順位を含む平均CTRを対象としています。この違いが34.5〜58%という開きにつながっている可能性があります(※両社の手法差とCTR差の因果関係は未検証・要確認)。

引用の有無でCTRは2.2倍変わる

Seer Interactive v3は、AI Overviewsに「引用されたかどうか」でCTRが大きく変わることも示しています。

AIO表示・引用の有無別クリック数比較 100万インプレッションあたりのクリック数を棒グラフで比較。AIO非表示は約33,500件、AIO表示・自社が引用ありは約20,743件(非表示より38%少ない)、AIO表示・自社が非引用は約9,445件(引用時より120%少ない)。出典はSeer Interactive v3。 DATA AIO表示・引用の有無別クリック数比較 (100万インプレッションあたりのクリック数・Seer Interactive v3) 約33,500件 AIO非表示 約20,743件 AIO表示・引用あり 約9,445件 AIO表示・引用なし 非表示より38%減 引用時より120%減 出典: Seer Interactive(引用ありは引用なしの2.2倍のクリックを獲得)
100万インプレッションあたりのクリック数を3パターンで比較する棒グラフ
  • AIO非表示のクエリ: 100万インプレッションあたり約33,500クリック
  • AIO表示・自社が引用: 同約20,743クリック(非表示時より38%少ない)
  • AIO表示・自社は非引用: 同約9,445クリック(引用時より120%少ない)

引用されたページは、引用されなかったページの2.2倍のクリックを獲得しています。 ただし引用されても、AI Overviews自体が表示されない場合と比べると、なお38%少ない状態です。

04考察

複数調査を比較すると、「AI Overviewsの表示でクリックが減る」という方向性は共通しています。この傾向は、手法の異なる調査間でも一致していると考えられます。

根拠は2種類あります。サイト集計(Ahrefs・Seer Interactive)と、個人の閲覧ログ(Pew Research Center)です。両方で、クリックは同様に減っています。

一方でGoogleは、こうした第三者調査に反論しています。Pew Research Centerの調査に対し、Google広報が調査手法の偏りを指摘したと複数の報道で伝えられています(※Google自身の一次声明URLは確認できていないため要確認)。報道によれば、Googleは日次で数十億件のクリックを送客しており、大幅な減少は確認していないと主張しています。ただし、この主張を裏付ける詳細データは公開されていません。

さらにSeer Interactive v3は、CTRの回復も報告しています。2025年12月には14か月ぶりの低水準(1.3%)まで落ち込みました。その後2026年2月には2.4%まで回復しています。減少が一方向に続くとは限らない点を踏まえ、回復の詳細は別記事『AI Overviews CTR「1.3%→2.4%」回復報道を検証』で扱います。

05限界

本記事は、WEBMARKS独自のクリックデータを収集したものではありません。既に公表された複数の一次情報を比較する検証です。各調査機関の生データや計算過程を、独自に再現できたわけではありません。

また調査主体のAhrefs・Seer Interactiveは、SEO関連ツールやコンサルティングを提供する企業です。「AI Overviewsの影響が大きい」という結果は、自社サービスの必要性を裏付けやすい方向に働きます。この点は留保として押さえておくべきです。Seer Interactiveは、v3レポート内で「相関関係であり因果関係ではない」という限界を自ら明記しています。

「ブランド引用の増減がGoogle側の変化か自社の施策成果か、区別できない」とも記載されています。

06実務への適用

マーケティング担当者の方が明日から実践できることは3点です。

  1. 「61%」だけを単独で引用しない。出典・対象期間・指標の定義をセットで確認します
  2. 自社のCTRは自社のデータで確認する。Search Consoleの生成AIパフォーマンスレポート等を使い、他社調査の数字をそのまま自社に当てはめないことが重要です
  3. 「表示されるか」より「引用されるか」を重視する。引用の有無で、CTRに大きな差が生まれています

いずれの調査も一定期間のスナップショットです。数値は今後更新される可能性がある点を踏まえ、定点観測を続けることを推奨します。

07この分野を体系的に学ぶ

この記事は検証記事です。AI Overviews時代のCTR計測とKPI設計を基礎から体系的に学びたい方は、AI検索最適化講座「計測・運用編: KPI設計と計測の考え方(V-A)」をご覧ください。